2007-01-27

位置とドメイン

かつて南方熊楠が没頭した真正粘菌の研究から発展し、古細菌の研究へ至って生命科学の分野では最近めざましい成果が出ている。特に3つのドメインが地球上の生物の系統樹として存在し、これ以外の生命は存在しないという発見は特筆すべきだろう。 ひとつはわれわれ人類の含まれる真核生物、二つ目は原核生物で真正細菌と古細菌に分かれる。古細菌(アーキア)は結局現在の生命全ての始原にあり、全く独立して現在に至るまでその強力な生命力で生き抜いている。おそらく他の2つのドメインを占めている生物が滅亡してもアーキアは生き残るだろう。われわれ人類が生命の中で最も優れていると勘違いし、驕っているのをあざ笑うかのようにアーキアのドメイン(生存領域)は拡張されるだろう。つまるところ、この地球上はドメイン競争の場なのだ。
人類が愚かにもその領土紛争を繰り返している間に、インフルエンザや癌、さまざまな感染症は全ての哺乳類をはじめとする生命の存在領域を奪うだろう。ツボカビが爬虫類の生命を簡単に奪うのも同様な傾向だろう。
生存できるわずかな隙間、そのニッチになんとか生き延びるために人類は苦闘している。インターネットでドメイン競争をしているうちにそれぞれのドメインにあるサイトはウイルスで汚染されているのだ。インターネットの世界と自然の世界のアナロジーは尽きるところがない。そしてこれらを表現する言葉が正しく事態を表現している。だれが表現を考え出したかはわからないが言葉の不思議な力が事態を理解可能にしている。
2チャンネルでひろゆきの自演と思われるドメイン差し押さえが騒がれているが、ドメインを世界規模で考えるよい機会だと思う。インターネットは鳥インフルエンザと同様に国境がない。そこに本質があると言えよう。ドメイン競争になじまないのだ。インターネットを使っている人類は名前に力が宿っているような錯覚をもっていると思う。長期的に見れば力の源泉は局所的なエントロピーの減少にすぎないから、名前にこだわるドメイン競争は無意味といえるだろう。